醫療手冊
MANUAL
香港の医療事情
大きく分けると、パブリック(公立)とプライベート(私立)の病院があります。公立の医療技術は世界トップクラスですが、その医療を安価で受けられるとあって、待ち時間もかなり長いです。誰でもいつでも同水準の医療が受けられる日本から来ると、戸惑うこともあるかもしれません。
香港では、病院の使い分けが重要になってきます。命にかかわる緊急を要するものは公立(救急の場合は待ち時間なし)、緊急を要さないものは私立を利用するというのが一般的です。香港人もこのような使い分けをしており、風邪など緊急度が低いものや、通って治す必要のあるものは予約の取りやすい私立を利用し、手術の必要があるもの等は公立を利用する傾向にあります。
医療の数で言うと、4割が公立、6割が私立で、私立の中でも家庭医と専門医に分かれます。公立と私立の壁は厚く、決して連携がとれている状況とは言えないため、最初に選ぶ病院がとても大切です。不安な場合は、家庭医を受診し、信頼できる専門医を紹介してもらいましょう。
専門医は、その専門分野ではプロフェッショナルですが、患者の家族構成や普段の生活まで把握していません。そのため、家庭医が患者の幅広い要素を把握し、医療の提案をしていきます。また、家庭医には、必要のない検査や手術を抑制する役割もあります。
香港在住の日本人が
注意すべき点について
医療の充実している香港ですが、それらを受ける前に、各自で対策することも必要です。
香港は、日本に比べ大気汚染の問題が深刻で、引っ越してきてから気管支炎に悩まされると言う方も多いため、空気清浄機を常時使用するなどの対策が必要になってきます。また、バスの多い通りでは空気の汚れが激しいため、極力そういった道を避ける、外出時はマスクをする等の工夫をしましょう。大気汚染レベルを発信しているサイトも存在するので、それらを確認し、大気の状態を知っておくことも重要です。夕方になると、更に空気が悪くなるため、屋外での運動はできる限り朝、車通りの少ない時間帯をおすすめします。
さらに、私たちを悩ませるのは、夏の暑さと湿度です。高い湿度の影響で、カビや水虫が多発するため、除湿機は必需品です。また、対策の一つとして、アルカリ性ではなく、弱酸性の石鹸を選びましょう。なぜなら、アルカリはカビの大好物だからです。
医療の場での
言語について
言葉の問題ですが、安全に医療を受けられる基準として、8~10歳程度の英語ができれば大丈夫だと考えています。ただ、医者との会話は医療のことだけではありません。医療外のたわいない会話の一部が聞き取れず、「重要なことを聞き逃したかもしれない」と必要のないところで不安を感じる方もいらっしゃいます。そういった心配のある方は、日本人もしくは日本語の話せる医者を選ぶ、または、通訳をつけた方が安心だと思います。
病院選びや
受診の際の注意事項
私立の料金体制は本当に様々です。予想していた金額を遥かに上回ってしまったなんてことも多々あります。そのため、事前に大体の金額を聞いておくこと、医療保険に加入しておくことがとても大切になってきます。なお、香港の医療現場は、比較的市場原理に基づいており、料金と質が比例している傾向にあります。安かろう悪かろうではないですが、価格だけを重視し過ぎるのも危険です。
持病のある方で定期的な通院が必要な場合は、かかりつけ医を決めましょう。毎回同じ医者に診てもらうことで、医者側も患者の変化に気づきやすくなるため、何か問題があった際に対処しやすくなります。
また、検査を受ける際には、都度なぜその検査が必要なのかを聞くようにしましょう。これで、必要のない検査を極力減らすことができます。
ただ、なかなか自分では判断できないことも多いかと思います。そのような場合は、やはり初めに家庭医に相談することをおすすめします。家庭医は、それぞれの専門医の評判から性格まで様々な情報を把握しており、患者との相性を見て紹介します。これにより、香港においても安心・安全な医療を受けることが可能になります。